ツルです。

おさまりの悪い弁当

不健康で非文化的な生活に小さく絶望しながら、コンビニ弁当をレンジに入れる。

色とりどりのおかずやブロック状に敷き詰められたごはんが、オレンジ色の光を浴びながら回っている。

 

回る弁当を眺めながら、母が作る弁当を思い出していた。茶色いおかず、握ったというより「固めた」と表現する方がふさわしい歪な形のおにぎりなどが敷きつめられたそれは、ほとんど毎回、きちんとフタが閉まっていなかった。

そんなおさまりの悪い弁当を思い出し、ひとりフッと笑ったところで、インターホンが鳴る。宅配便で届いたのは、母からの仕送りだった。まるで監視されているかのようなタイミングにぎょっとする。

送るなら事前に連絡くらいして欲しいな、と思いながらも少しワクワクした気持ちで箱を開けると、ご当地レトルトカレー、小魚とくるみの佃煮、らっきょう、大量のカプリコなどが顔を出す。相変わらず独特なラインナップだ。母は、一度でも私が「これ好き」と呟いた食べ物は大量に買ってくる。(カプリコにハマっていたのは高校の頃の話なのだが)

そして、これらの食材が、クシャクシャの地元新聞や銀行がくれた粗品のタオルなどと一緒に敷き詰められていた。


仕送りさえも、おさまりが悪い。


ダンボールから全て出しおわったところで、ふと、空っぽの箱を見つめる。

まだ、地元の空気は入っているだろうか。
実家の匂いは、残っているだろうか。

ダンボールに顔をつっこんでみるが、ダンボールの匂いしかしない。
じわっとする気持ちは見ないふりで、すくっと立ち上がり、少し冷めてしまった弁当に手を伸ばす。


 今はとにかく、おさまりの悪さだけが恋しかった。

 

/「食卓」寄稿文